栃内新:進化から見た病気―「ダーウィン医学」のすすめ

 

進化から見た病気―「ダーウィン医学」のすすめ (ブルーバックス)

進化から見た病気―「ダーウィン医学」のすすめ (ブルーバックス)

 

 評価:9点

これ、個人的には非常に共感できる学問です。

常日頃、全てのものは理由があって存在している、と思っているので。(こういうのって、充足理由律と言うのかしら)

雨と晴、光と陰、男と女、朝と夜、生と死といった2つの背反する事象が織り混ざっての世界だと思うし、良いことがあれば悪いことがある、そんなバイオリズムの中で生きている。常に中間中立平穏なものなんてない。

話は逸れましたが、病気に留まらない人間の身に起こる様々な事象を、「何故そのような事象が、生物学的に必要なのか」と言う観点から学問した一冊。

 

ダーウィン医学は、病気の意味を進化の観点から解き明かす生物学。「病気になること」は、体にとって意味のある性質

・ヒトの体は、それほど大きく進化していない=抗生物質などの化学的な療法をどこまで使って良いものか

ダーウィンの「自然選択説」=自然そのものが生物を選択する力を持っている

・何故「病気にかからない」性質が進化していないのか=①ウイルスとヒトは共存関係②昔は有利だった特性が今は不利に(ex糖尿病など)

・風邪=発熱:ウイルスの増殖を抑える、倦怠感:安静を強いる=必要な症状

抗生物質はウイルスには効かない。細菌やカビなどの微生物に効く

・腸は「体外」機関。糞便の大半は菌の死骸。

・ワクチンはダーウィン医学の考えによく合致した医薬品。病原体の一部を体に摂取することで免疫を高める仕組み。

・「うつ病」はストレスの多い環境に遭遇した場合の対策。引きこもることが無駄な活動を避けて生き延びる知恵として有効に働く

・臆病や不安になりやすいという性質は生き残るために有利な性質(勇敢なグッピーは全滅した)

・アレルギー(花粉症やアトピー)は発展途上国に少なく、途上国に多い。細菌や帰省中に適度に接触することも重要

ハンチントン病ダウン症(遺伝病)の遺伝子を持っているヒトは、持っていない人よりもガンの発生率が低い

・男性同性愛者で、HIVを発症させにくくする遺伝子が発見された

・ガン細胞の中で活動している遺伝子は、ヒトの発生初期に見られる激しい細胞分裂を可能にしている遺伝子=ガンの原因となる遺伝子がなければ我々は正常に発生することができない

・強いつわりを経験した妊婦は、そうでない妊婦に比べて流産の確率が約半分だった=つわりを引き起こす食物の中には胎児に奇形を引き起こす可能性を持ったもの=つわりは胎児を守り安全な出産を確保するために進化した性質

・おばあさん仮説=多くの生物では生殖年齢と寿命が深く関わっている一方、ヒトは異なっている=生殖年齢を過ぎて長生きした女性ほどたくさんの成人した孫を持っていた=おばあさんが育児に参加することが孫の生存率を上げた

・一定の年齢を越えると、ヒトにおいても年齢とともに個体数が減ることがプログラムされている